著者:杉井光
題名と表紙を見ただけでは読みたい気持ちはそれほど沸いてこなかった。残りわずかとなったページを読んでいた大学生の姪が「えぇ!えー!」と驚きの声をあげていた。そして読み終えた時にこの本を読んでみて欲しいと言われた。渡された文庫本の紹介文”大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。”という一文をみて、読んでみようと思った。この一文にミステリ要素を感じたからだ。
東野圭吾や宮部みゆきを読んでいるときほどのワクワク感はなかったけれど、それは初めてこの著者の作品を読んでいるからで、新しいものへの警戒心みたいなものかもしれなかった。ただ普通におもしろく、このあとにどのような展開が待ち受けているのかを想像しつつ読み進めていた。
作品終盤、物語の佳境にはいり、自分の想像が大すじとしては間違っていないことが確認できてきた。しかしこの重要な場面を集中して読むことができなかった。周囲の会話が気になっていたし、あと数十分で本を返さなければいけない状況であった。
だから、というのは言い訳になるが、わたしは一番の読みどころをそのまま文字通りに読んでしまった。大きな仕掛けがあったことにすぐに気付けなかった。姪に感想を伝えるためにことばにしている時、それに気づいた。もしかして。。。もう一度本を見直した時に驚いた。そしてすべてがつながった。そう、本当にすべてが。
新しい感覚の本。知れてよかった。読み終わった後、読んだ人とその感想を共有したくなる本である。姪の気持ちが理解できた。ぜひ読んでみてほしい。
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