著者:辻村深月
なかなか分厚い。そして重たそうな題名。姪に勧められてもなかなか読む気にならなかったが、恋愛小説だと聞いて気持ちが軽くなり本を開いた。
この著者の本は一つだけ読んだことがあった。『ツナグ』。SFやファンタジーのような現実味のない話はあまり好きではなかったけれど、死んだ人間と会える『ツナグ』はなぜか心打たれるものがあった。そんな本の著者の作品ということを知って少し興味が湧いた。読み進めると、『高慢と偏見』を彷彿とさせる題名が意図的だということがわかり、さらに興味を持った。『高慢と偏見』も読んだことがあったからだ。
文庫本の帯に書かれた解説の、”この小説はヘビーなのである”、”解像度を高めて描写することを主題としているからだ”という言葉は、読書後の感想をちゃんと表現してくれていた。
読んでいると、どうしてこんないろんな角度の気持ちをここまで表現できるのだろうと感心してしまうことが何度もあった。すべてのことに対して向き合って掘り下げて考えなければここまで書けない、経験していないと書けないと思える描写に何度も出会う。それは自分に身に覚えのあることがたくさんあるということなのだろう。この本に共感する人が多いとなると、同じような経験をしている人がたくさんいるということなのだろう。
結婚相談所の世話役・小野里の言葉が鋭く、自分を顧みさせられる。ピンとくる、こないが意味するところ。
本全体を通してすべてが共感や納得で終わるわけではなかったが、この著者2作品目の読書もまた心にくるものがあった。
解説もまたよかった。この著者の他の作品も読んでみたくなった。そして『高慢と偏見』をもう一度読みたくなった。
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